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■階層と消費
非階層志向の登場
これまで本論では、現在、国民の中に正の階層志向を持つ人と持たない人(反階層志向の人)がいることを示してきた。正の階層志向とは、高い学歴、高い評価の職業、高い収入、高い地位
、多い財産を重要と考える価値観であり、反階層志向とはその反対である。そして社会階層に関する最新の研究によれば、高い地位
、高い学歴、高い評価の職業、多い財産を重要でないと考える人が6〜7割に達していた。
このように反階層志向が強いのは、生活にとって最も重要な収入の多寡が、地位
や学歴や職業評価の高さによってあまり規定されず、財産の多寡によっても、少なくとも表面
的には制約されていないように見えるからであろう。簡単に言えば、中央省庁のキャリアたちは、高学歴で地位
も職業評価も高いが、残業が多くて収入が少ないために、タクシー券をごまかすようなケチなことをしている。大企業に勤めても倒産の危機はある。であれば、無駄
な努力はやめて、自分が好きなように生きた方がトクだ、という価値観が増大してきたのである。
さて、この正と反の階層志向の他に、階層研究では、もう一つ別の階層志向を示している。それは「非階層志向」と呼ばれるものであり、正の階層志向ほど、高い学歴、高い評価の職業、高い収入、高い地位
、多い財産を重要とは考えず、かといって、反階層志向ほどそれらを軽視もしない代わりに、もっと別
の価値観を重視する志向性である。
その価値観とは「共同性志向」「遊び志向」「脱物質指向」と呼ばれるものである。具体的には、共同性志向は「ボランティア活動、町内活動などの社会活動で力を発揮すること」を重要と考える価値観、遊び志向は「趣味やレジャーなどのサークルで中心的役割を担うこと」を重要と考える価値観、脱物質指向は「これからは物質的な豊かさよりもこころの豊かさやゆとりをのある生活をすることに重きをおきたいと思う」価値観である。
このような非階層志向は、高い学歴、高い評価の職業、高い地位、多い財産を志向する人ほど強いという。それはしかし、それらをまだ持っていない人が非階層志向になるということではなく、すでにそれらを持っていて、かつそれを維持しなくてはならない人が非階層志向になるということであろう。つまり、すでにある程度恵まれた人が、ボランティア活動やサークル活動を志向しているということである。
では、同じように高い学歴、高い評価の職業、高い地位、多い財産を持ちながら、ある人は非階層志向になり、ある人はならないのはなぜか。そこで重視されるのが、パーソナルネットワークの量
である。詳細の説明は省くが、自分の属する会社・組織だけでなく、いろいろな職種の人々と付き合う人ほど、共同性志向、遊び志向、脱物質指向が強まるのである。
もちろん、共同性志向、遊び志向、脱物質指向が強いからこそ、いろいろな人々との付き合いが増えるのであろうから、どちらが後先かは不明であるが、単に学歴や地位
などを求める生き方とは別の生き方を求める人が増えていることはたしかであろう。
こうした非階層志向の人々は何を買うだろうか? それはおそらく単なるモノではないだろう。むしろ、ここに行くといろいろな人に会えて楽しい、といった場を求め、そこに金を払うようになるかも知れない。結婚情報サービスならぬ
交遊情報サービスのような有料会員システムを百貨店が作り、趣味やレジャーを媒介にした仲間づくりを支援するというビジネスも考えられる。
なにしろ百貨店には顧客リストがある。そのリストをDM送付先としてのみ使うのではなく、顧客同士の出会いを支援し、そこから新たなビジネスを発生させてはどうだろうか。(つづく)
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表 非階層志向の重要度評価 (単位
:%)
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重 要
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やや重要
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あまり重要でない
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重要でない
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共同性志向
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24.2
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49.5
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19.6
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6.6
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遊び志向
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9.2
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37.2
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40.7
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12.9
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資料:「社会階層・社会移動調査」1995年
出所:今田高俊編『日本の階層システム5 社会階層のポストモダン』東京大学出版会、2000年
参考文献:井上寛「脱ー階層志向の状況と構造」(今田高俊編『日本の階層システム5 社会階層のポストモダン』東京大学出版会、2000)
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