団塊世代が持つ「趣味にあった暮らし」に対する志向性は若いときから現在まで一貫している。言葉を換えれば「マイペース」で「楽しい」暮らしということだ。
NHK放送文化研究所は「日本人の意識」という調査を1973年から五年ごとに継続して行っている。その調査に生活目標についての設問がある。四つの類型的な目標が用意されていて、そこから自分の生活目標に近いものを選ぶという設問だ。
四つの類型とは「その日その日を、自由に楽しく過ごす」(快志向)、「しっかりと計画をたてて、豊かな生活を築く」(利志向)、「身近な人たちと、なごやかな毎日を送る」(愛志向)、「みんなと力を合わせて、世の中をよくする」(正志向)である。
結論から言うと、団塊世代は「愛志向」が強くなった世代である。1973年の20−24歳、つまり1949−53年生まれの志向の推移を見ると、「愛志向」が73年から98年まで、31%、37%、41%、43%、40%、43%と一貫して高い。この傾向は1944−48年生まれの世代でもほぼ同様である。
しかし1929−33年生まれ、つまり昭和ヒトケタ世代になると、「愛志向」は73年から98年にかけて25%、30%、27%、36%、34%、37%と推移しており、団塊世代と比べると、つねに大体7ポイント前後低い。対して「利志向」は特に40代から50代前半のときに高く、また「正志向」も一貫して高い。ただし「利志向」は50代後半になると低下し、代わって「愛志向」と「快志向」が上昇するという傾向がある。
つまり、昭和ヒトケタ世代は、戦後復興、高度経済成長の中心にいた世代であるから、社会をよくしたい、豊かな社会を築きたいという意識が一貫して高く、そのためにしっかりと計画をたてて生きてきた。しかし老後は、その日その人自由に、身近な人たちとなごやかに暮らしたいと思っている。非常にメリハリがあり、達成感、充実感のある人生だったといえる。
これに対して、団塊世代は、若いときにすでに高度経済成長が達成されていたので、計画的に豊かな生活を築くという志向性が弱まり、若いときからその日その日を楽しく過ごしたり、身近な人たちとなごやかに暮らすことが可能だったのである。
しかし、団塊世代といえども、20代後半以降はずっと「利志向」が35%前後いるし、73年を除けば「利志向」は「快志向」のつねに二倍いる。昭和ヒトケタ世代ほどではないが、団塊世代もまた未来志向だったのである。が、その未来志向は、一部の人を除けば、社会の改革の方向には向かわなかった。むしろそれは自分の消費生活の向上という目標にのみ向かいがちとなり、結局は身近な人たちとのなごやかな生活、つまりマイホーム主義、私生活主義の完成へと向かったのである。
また、1973年から88年までは、20−24歳では「快志向」と「利志向」が拮抗する傾向が一貫していた。しかし93年ごろから「快志向」が「利志向」をはっきり上回りはじめ、98年には「快志向」が35%に対して、「利志向」が22%と大きな差が開くようになった。
98年の20−24歳というと1974−78年生まれだから団塊世代の子どもが最も多い世代である。この5年間に生まれた923万人の7割弱、627万人が団塊世代の子どもなのである。
73年に25歳前後だった団塊世代は、しっかりと計画をたてて、豊かな生活を築くよりも、その日その日を、自由に楽しく過ごす人生に強く憧れた。そして身近な人たちと、なごやかな毎日を送ることを求めた。
そういう親の価値観の中で育てられた子どもは、さらに豊かになった時代の中で、もはや将来の生活の青写真を持って生きようとは思わず、ただ今ある豊かさを消費して生きるようになったのである。
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